戦地の上に



放置された私の遺体を



夏の陽射しが腐らせた



300年の昔



同じ場所で戦があり



斬られた武士の遺体は



掘られた土の穴に埋められたそうだ



やがて季節は巡り



名も無き武士の 墓標の周りに



一輪の可憐な菊が咲いたという



路面の陽炎から立ち昇り



鎧を纏い歩いてゆく



何もかも我が手で燃やしてしまった



小説は、ここの行で終わると



青い炎に包まれ 灰になり



天に舞い上がった



300年前の幻影は



悠然と立ち上がり その姿を現した



足元に落ちた刀を拾うと鞘に戻す



朽ちた遺体に合掌



"私の欠片よ 安らかに眠りたまえ"



音もたてずに幻影は


姿を消す


手のひらに ひと握りの灰を遺して


幻影は揺らめく夏の陽射しの中に


消えゆく…